ENGINE TUNING

理想的なエンジンの状態とは、真夏の渋滞時であろうと、真冬の走行であろうと、燃焼室温度が設計値内に安定することを言います。しかし実走行下では、若干のクール気味、ヒート気味の状態は起こりえます。
とりわけサーキット走行では、水温・油温管理が難しいことは周知のことです。
またエンジンのトルクやパワーの出力を、加速の体感や最高速から正確に割りだすことは不可能です。トルクやパワーは感覚ではなく、正確に測定された数値で表してこそ、技術的改良における基礎的データとなり、さらなる技術の発展に寄与していくものです。弊社ベンチでは、水温、油温、油圧、吸気温度、A/F、トルク、エンジン回転数、ベンチ室内温度、気圧、乾球温度、湿球温度を管理し、実走行と同様の負荷をかけてエンジンを作動させます。そのためラッピング(慣らし運転)は、安全で経済的に行えます。ベンチでラッピングを終えたエンジンは、即全開走行が可能な状態にあります。また、ラッピング前後のエンジンコンプレッションも測定し、エンジンの状態を把握することはもちろん、エンジン組み立て精度のチェックを行っております。

●リビルトエンジンの特色及び実施要項
ロータリーエンジンをOHする際、コストを下げる上で使用品を多く用いる場合、ハウジングのスクエアリング溝や、その歪み等、再使用に辺り注意すべき箇所はありますが、最も重要な要因は、ハウジング内壁(ローター摺動面)の編摩耗の度合いです。
下記はリビルトエンジンを製作に伴う、主要構成部品に関する説明です。

※サイドハウジング
摺動面の研磨及び表面処理をすることで新品同様に再生。ただ再使用するだけではありません。

※ローターハウジング
摩耗の激しいこの部品は、弊社製作リビルトエンジンでは、ほとんど使用歴のない再使用可能品か新品を使用します。

※ローター
各シール溝の点検・計測の上、完全に洗浄を施し、前後の重量区分をそろえた物を再使用します。もちろんローターベアリングも点検、必要があれば交換します。

※アペックスシール・サイドシール・コーナーシール
全て新品を使用。弊社規定のクリアランスサイズにて組付けします。ロータリーエンジンは、「各シールのクリアランス」と、「シールの組み方」が非常に重要です。

※オイルパン
歪みや凹みがある場合は修正し、塗装の上、再使用しています。

※フロントカバー
洗浄の上、塗装。メタリングオイルポン・ドリブンギア、シャフトの点検。
オイルシール交換で再使用しています。

※エキセントリックシャフト
振れの計測。摩耗状況の計測。オイルジェットの点検・締めつけ。ニードルベアリングを交換の上、再使用します。ジャーナル部の計測により、ステーショナリギア・メタルベアリング、及びローターベアリングとのクリアランスも決まります。

※オイルポンプ
内部ローターやミドルプレートの確認・交換の上、再使用します。

※スラストプレート・スラストワッシャー類
点検の上、交換か再使用を選択します。ニードルベアリングは新品交換します。

※フロント及びリアステーショナリギア
各ギアの確認。メタルベアリング部の打ち替え交換をします。
この上でエンドプレートを最適化。組付けます。
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〜 ナイトスポーツのスペシャルエンジンとは? 〜

クオリティとコストパフォーマンスを追及したリビルトエンジンから、ノウハウを余すことなく注ぎ込んだサーキット用エンジンなど、弊社が誇る豊富なラインナップから、ニーズにベストマッチなエンジンを選択してほしい。
そのコンセプトとディテールをFD3S用エンジンを例にご説明します。

ハイクオリティーリビルトエンジン『URD13』

計測を行い、再利用が可能な部品を使用し製作するリビルト・エンジンです。シール類及びラバー系の部品は全て新品を使用します。ローターとハウジングは再利用もしくは新品を使用します。

高精度シーリングで万全を尽くすストックエンジン『RD13』

ハウジング類5枚、ローター、各シール等ローターの摺動に関する部分は全て新品を使用し製作するノーマル・エンジンです。エキセントリックシャフト、オイルパン、フロントエンドカバー、オイルポンプ類は再利用します。摺動面部品を新品にすることと、弊社規定の数値により組み上げることで、ロングライフの実現を可能にし、量産エンジンよりも高精度・ハイパワーなエンジンです。

RD13に+αを施したハイパフォーマンスストックエンジン『RD13P』

上記のRD13にポート段付き修正を加えたエンジンです。ノーマル・ハウジングの’鋳型’跡の砂地を滑らかに仕上げます。ポートタイミングは変更しませんので、コンピューター・セッティング等の必要はありません。また、ノーマル・タービンへのマッチングも損ないません。少しでもより良いエンジンに仕上げる第一歩です。

ハードな連続走行に耐える高耐久ストックエンジン『RD13K』

上記のRD13に強化加工を施したエンジンです。強化加工の内容は、ローターランド加工、フロント・サイドハウジングのオイルサクションポート加工、リア側ステーショナリギア剛性ダウン加工となります(詳細は次ページ)。高回転の使用に対しての耐久性の確保と、ハードな走行(サーキット連続走行等)目的のためのエンジンです。ポート研磨は施しません。

サーキットユースに的を絞った高耐久ハイパフォーマンスエンジン『RD13KP』

上記のRD13Kに追加してポート研磨を加えたエンジンです。ポート加工の行程はRD13同様です。RD13K及びRD13KPは、サーキット・ユースのユーザーにお勧めです。

タービン交換マシンに最適なハイパワーエンジン『RD13KF』

上記のRD13Kをベースに、ポートの拡大研磨を実施します。ここからサイドポート・チューニングが始まります。オーバーラップギリギリのところまでの拡大で、タービン交換車両にお勧めです。4,000rpm以上で、大幅にパワーアップします。

BIGシングルターボ車に贈るハイパワーフラッグシップエンジン『RD13KSF』

上記のRD13Kをベースに、RD13KFよりも更にポートを大きく拡大変更します。BIGシングル・ターボ車両とマッチするハイパワーエンジンを目的とします。

〜 スペシャルエンジンを更にグレードアップさせる数々のチューニング 〜

パワーを追求した場合や高回転域を長時間使用する場合につきまとうのが、耐久性の問題。
通常の走行では問題はありませんが、高負荷条件の中では僅かなダメージが蓄積し、大きなトラブルへと繋がることが多くあります。
そこで弊社のスペシャルエンジンでは、コンプリート状態から更に耐久性をアップさせるための、数々のチューニングメニューを用意しています。
特にサーキット走行を想定したエンジンを求めるドライバーにはお勧めです。

A.Cアペックスシール

13Bエンジンのアペックスシールが2ピースに変更され、熱による問題が取りざたされていました。ノーマル2ピースでも、ノーマルエンジン、ノーマルタービンのブーストアップ仕様(約330ps)であれば全く問題なく使用可能です。しかし、タービン交換車両等でサーキットユースの場合、問題として熱によるシールの「ソリ」が挙げられます。3つの部品構成で成される3ピースより、2ピースとなることによって熱膨張率が変わってしまいます。ノーマルの2ピースを3ピース加工する方法もありますが、カットの際の精度の問題も発生してしまいます。ノーマルの2ピースアペックスシールは非常に高い精度で作られています。個体の誤差はほぼありません。そこで、インナーのアペックスシールスプリングの範囲内の面積で一部を削ることにより、アペックスシールASSYとしてのサイズを変更することなく「逃げ」を設けることが可能です。

SERVICE MENU

〜 エンジンベンチを用いた正確な診断&ラッピングメニュー 〜

エンジンの出力チェック等を行う場合、シャシーダイナモを使うのが一般的でしょう。
しかし、環境変化の影響を受けやすいシャシーダイナモでは、エンジン単体の性能・コンディションを正確に計測することは出来ません。
そのため弊社では、コンピュータ制御による緻密なチェックが出来るエンジンベンチを導入しています。
これにより、正確な出力テストをはじめ、パーツの効率的且つ高品質な開発や、理想的なラッピングまでも行うことが可能です。

コンピュータ制御による正確なコンディションチェック&製品開発

弊社ではエンジンベンチを用いることで、気温等の環境変化を抑え、設定条件下でエンジン単体のコンディションを正確・緻密にチェックすることが可能です。 また、コンピュータ制御でテスト条件を同一に出来るため、エンジンパーツの開発においても、効果を数値として視覚化でき、仕様変更による純粋な効果を判断出来るため、効率的且つ高品質のプロダクト開発が可能となります。 例えば『HYPER SPORTS ROM 4•BEAT』の開発においては、ポートタイミングの変更によるパフォーマンスの変動を正確に知ることが出来るため、効率的に最適なタイミングを見極めることができ、マシン性能の底上げに成功しています。

ベストなアタリ付けを行うエンジンラッピングメニュー

エンジンベンチを導入することで、理想的なエンジンラッピングも可能となります。 慣らし運転をしなくとも、現代のエンジンは破損しませんが、パフォーマンスには影響がでます。例えば、 本来は300馬力出たはずのパワーが、290馬力ぐらいしか出ないと言うような結果になります。気が付いて、慣らしをやり直すと300馬力になるかと言うと、少しは効果がありますが、決して100%元には戻りません。高い車、高いエンジンですので、あせらずに慣らしは行なうことをお勧めします。 しかし、慣らし運転は時間も費用もかかるため、煩わしさを伴うことも確かです。 そこで、弊社ではエンジンベンチを用いて最適な時間・回転数を制御しながら、ベストなアタリ付けを行うラッピングメニューを用意しています。 アイドルで5〜6時間回した後に、1500rpm負荷12〜14馬力で30分。2000rpm負荷16〜19馬力で30分と言うように、6000rpmまで徐々に負荷をかけながら、たっぷり2日間程時間を掛けて丁寧に慣らしを行ないます。

〜 インジェクターテストサービス 〜

エンジンオーバーホールを実施する際、特に重要なことは、エンジン補機類の完全点検・完調化です。
全ての箇所を完調化して初めて、真の「エンジンオーバーホール」と言えるでしょう。
数ある補機の中でも重要なパーツがインジェクターです。
弊社では、コストを抑えて新品並みのコンディションを取り戻す、インジェクターテストサービスをご用意しています。

コストを抑えつつインジェクターをリフレッシュ

FC / FD / SEでは非常に多くの制御系統及び部品がエンジンを覆うように設置されています。
レシプロエンジンに比べ発熱量の多いロータリーエンジンでは、走行距離や使用時間によってはエンジン補機類への影響が想定されるため、より確実に全ての箇所を点検し、完調化して初めて「エンジンオーバーホール」と言えるでしょう。

その補機類の中でも重要なファクターであるインジェクター。
もちろん交換することが最も理想ではありますが、高価な部品のため少しでもコストを抑えるために、弊社では必ず吐出量の計測と超音波による内部洗浄を行い、良好な状態にして再利用します。

インジェクターテスター